定村史朗 プロフィール
東京生まれ。7歳でバイオリンを始め鈴木メソードにて松井宏中に師事する。
1984年に渡米。ボストンのバークリー音楽大学でジャズバイオリンを学び数々の賞を受賞後、87年ニューヨークへ移る。NY市立大学 CITY COLLEGE 芸術学部音楽科卒。
88〜90年 エディ・パルミエリ・バンド(グラミー賞7度受賞)へレギュラー参加、全米ツアー、ヨーロッパのジャズフェスティバルなどで演奏。DAVID SANBORN や MIKE STERN 等と共にフューチャーされたアルバム「SUEÑO」がグラミー賞にノミネートされる。
95年より即興を中心とした NYベースのファンクプロジェクト UPLINKERS を結成、現在に至るまで、BLUENOTE等をはじめとする NYのクラブで様々な音楽活動を行っている。
2005年にアルバム「METAMORPHOSIS」を発表、ゲストにエディ・パルミエリ、ロンカーター等を迎えジャズ、ファンク、ラテン、現代音楽などを融合した話題作と各メディアで絶賛される。
日本においては、帰国時に横浜モーションブルー等で、里見紀子をホストとするジャズバイオリンサミットに中西俊博らと出演。また南青山マンダラにて、フェビアン・レザ・パネ、尾島由郎、大儀見元らとノンジャンルな即興音楽のユニット「TIME&PLACES」を継続的に行っている。87年よりニューヨーク在住。
Uplinkers
Uplinkersの構成は定村のバイオリン以下、アフロキューバン パーカッション、ブ
ラジリアン パーカッション、ボンゴ、ファンクドラム、ベース、ギターという一見
変わったものであるが、リズムを重視したこの構成には、従来のジャズのリズムパター
ンに飽き足らない定村が、ジャズの枠を突き抜けて、現代の感覚により合った新しい
音楽ジャンルを模索している事が如実に現われている。
もちろん中心にあるコンセプトはジャズのインプロヴィゼーションであり、カテゴリー としてのジャズが一番自分にとって表現しやすいアートフォームだと定村は言う。し かしスイングのリズムが本当に現代にぴったりくるのか、そのリズムで現在という瞬 間を本当に表現できるのか? と、Uplinkersは演奏する事によって問いかけている のである。
音楽の決定的な要素であるリズムパターンを、伝統という名の元に安易に選んでいて は本当の自分の音楽はできない。現にそれを否定する事からマイルスやコルトレーン は革新者と呼ばれ、常に前進し続けていったのではないか? と定村はストイックに 追及する。
彼自身が今一番興味を持っているのは、フュージョン以前、70年代にジャズロックや クロスオーバーと呼ばれていた頃のコンテンポラリージャズである。
当時マイルス・デイビスを先頭に様々な音楽的試みが行われ、モダンジャズの発展形 の新しい音楽が生まれる可能性が限りなくあったのに、フュージョンが「売れる」音 楽である事を証明するや否や、全ての可能性の芽がフュージョン一色にすり変わって しまった事を定村は指摘する。
「70年代半ばの音楽的な試みはあまりにも混沌としていたし、あれをそのまま再現し たいわけじゃない。ただ僕が言いたいのはあの頃の音楽はもっともっと掘り下げて行 けば、とんでもなくおもしろい方向に進化して行った可能性もあったという事。90年 代の今、あそこにいったん戻ってみてそこからどこに行けるのかをやってみたいんだ よね。」
Uplinkersでは、既にある曲を演奏するという概念はなく、全メンバーによるインプ ロヴィゼーションの応酬で曲がその瞬間瞬間作られていく。
ソロの順番も打ち合わせで決まっているわけではなく、従来のジャズのパターンにそっ て主題に戻っていくわけでもない。それだけに各メンバーの創造性と柔軟性、取るべ き場所でイニシアチブを取れるかどうかが重要になる。
幸運にもそれを体現できるニューヨークでも選り抜きのリズムセクションに恵まれ たUplinkersのステージは、常に緊張感にあふれ、音楽的実験と芸術的表現が微妙な 割合でミックスされた全くオリジナルなものである。
音楽的にもっともっと冒険したい、と言う定村。ジャズクラブに限らずダンスクラブ でのライブにも意欲を示しており、DJのリミックスによるインプロヴィゼーションを 取り入れるアイディアもあるという。
ジャズというアメリカ生まれの偉大な芸術に魅かれ、ニューヨークに移り住んで研 鑽を積む日本人ジャズミュージシャンは数多い。しかし、テクニックや伝統を学ぶ事 や、既存のアーティストのバンドで演奏するだけでは飽き足らず、自らリーダーとし て、強者ぞろいのニューヨークのミュージシャンをバックに新しいコンセプトを表現 しようとする、貪欲かつ実力のある日本人アーティストはそういない。
定村史朗は明らかに数少ないその中の一人である。ニューヨーク発のコンテンポラリー ジャズプロジェクト、Uplinkersからは当分目が離せそうにない。
